三日目② アメリカのバイク修理 @メンフィス(テネシー州)~コンウェイ(アーカンソー州)
ひん曲がったブレーキと戻らないスロットルを駆使し、何事も無かったかのように走り出す。
意外とブレーキの曲がりは気にならないが、アクセルは気になる。
自家製のクルーズコントロールと銘打ったものの、緊急時はスロットルが戻らないことを忘れてしまうので非常に危険だ。
とはいえ、調べたバイク屋までは160マイルあるので、休憩を勘案すると約3時間は掛かる。
いやぁしかし、エンジンが掛かって良かったねぇ。
これでレッカー呼ばなきゃいけないとかになると大事だった。
レンタルバイク屋に電話で連絡しようにも、英語わかんねぇし。
上手く伝わらなくて、俺が立ちゴケしたとか思われた日には、日本人バイカーの名が廃るし。
と、お得意の強制プラス思考発動。
でも残念ながらMemphisは僕の中で、あまり好きじゃない街に降格してしまった。
Memphisから橋を渡るとそこはアーカンソー州。
昨日、一日中踊らされたテネシー州とも今日でお別れ。
そこからバイク屋のあるConwayまで高速を走る。
昨日と違いMemphisを抜けても、比較的都会の町並みが続く。
とは言え、日本の皆様の想像する都会ではございません。
ガソリンスタンド、ファーストフード店、モーテルが合計10件以上あれば都会ですからね!!
携帯のLTEが届くなんて夢みたいなこと言っちゃあいけませんよ。
3Gですらちゃんと届いてないんですから、、、
昼前、目当てのバイク屋に到着。
うーん、さすがハーレーのディーラー。
ハーレーしか停まってないわ。
バイクを停めてヘルメットを脱いでいると、おっちゃんが出現。
ここの新車の営業マンだそうだ。
ハーレーのロゴTシャツにGパンだから、客なのか従業員なのか見分けられません。
彼に事情を説明すると、修理担当者のところに連れて行ってくれることに。
修理担当の彼は修理箇所と年式・型番をチェックした後、在庫確認のため倉庫に。
在庫・・・「ナシ」
最悪の事態。。。てかレバーはともかく、グリップ無いってどういうことなんだ。
俺の表情を見てか、また倉庫へ行く彼。
戻ってきた彼の手にはレバーとグリップが!!
聞くと、以前にこの店でカスタムをしたお客さんのノーマル部品だそうだ。
中古だから、これを私にくれるというのです。
やるなお主!
工賃も30ドルくらいだと。(部品と工具さえあればこれくらい自分でも直せますけどね)
1時間くらいで直せると。
移動手段も無いので、店内で待ちます。
店内はカスタムパーツとかTシャツとか結構豊富に揃っています。
最初に声を掛けてくれた営業のおっちゃんがこの店のステッカー(売り物)をくれました。
この店に来た初めての日本人だと言ってましたが、本当かどうかは怪しいです。
店内のソファに座っていると、他のバイカーが声を掛けてくれます。
きっとアジア人のハーレー乗りなんか居ないんでしょうね。
事情を話すとみんな同情してくれます。
バイカーは世界どこでも仲間意識があって、いい奴が多いです。
見た目はハルクホーガンみたいな感じですけど。。。
アメリカではお約束通り、予定の1時間を越えて、更に40分くらい経ったところで呼ばれる。
行くと、「ちょっと悪いニュースがある」と浮かない顔。
「実は年式が違ったみたいでブレーキレバーが付かなかったんだ」
・・・え?
あんたプロやろ?年式教えたから分かるんちゃうんかいーー!!
そうです。私がミスターぬか喜びです。
しかもまだグリップもつけてへんやーん!
何しとってーん!
というわけでグリップだけ装着してもらい、ブレーキレバー曲がったまま走ることに。
作業代金の10ドルはちゃっかり請求されました。
でもハーレーの帽子をくれました。
みんな根はいい奴みたいですので、このお店紹介しておきます。
LANDERS
http://www.landersharley.com/
皆様ももしMemphisのモーテルでバイクを倒されたら、ここに駆け込んでください。
もう昼過ぎ!
まだ今日の目的地まで300マイルくらい残っております。。。
三日目① 恐れていた事態 @メンフィス(テネシー州)
三日目朝、モーテルで目覚める。
安いモーテルでも結構熟睡できる。
筋肉痛はあまり感じないが、日焼けが痛い。
顔が日に焼けてボロボロになっている。
昨晩、日焼け止めを買ったので少しはマシになるだろう。
さて、タバコでも吸うかとモーテルの部屋を出た。
私が泊まっていた部屋は珍しく3階。
廊下から駐車場が見下ろせる。
何気なく、自分が昨晩バイクを止めた方向を見る。
が、バイクが見つからない。
いや、バイクはあった。
記憶通りの形で置かれていなかったので、見つけられなかったのだ。
こ、こけてますやん!!
一瞬、背筋に緊張が走った。
だが思ったより冷静な自分が居た。
駐車場に下りようと階段へ向かう途中、一つの部屋からアメリカ人が登場。
彼もタバコを吸おうとしたようである。
僕を見つけた彼が「おはよ・・・」と言おうとした瞬間、「俺のバイクが倒されてる!」とまくし立てる。
冷静な訳が無かった。。。
彼は「俺は触ってないよ。」と言ってたが耳に入ってくるはずも無い。
1階に降り、バイクに近寄って見ると、スタンドとは反対側に倒れている。
どうやら自然に倒れたわけではなさそうだ。
てゆーか誰か倒したやろ、コレ!!
ガソリンがこぼれているらしく、ガソリンの匂いが漂っていた。
とにかくバイクを起こす。重い。
膝を入れると簡単に起き上がった。
こういう時のためにも883にしておいて良かったという自虐ネタを披露。
改めてバイクを確認。
ブレーキレバーが曲がり、右側のグリップがスロットルにめり込んでいる。
あとはマフラーの下部分と右側のサイドミラー、ステップに傷が。
幸いにもタンクは無傷。ガソリンは傾いていた給油口から漏れたようだ。
一度、エンジンを掛けて見る。
幸か不幸か、エンジンは掛かる!
スロットルを開けると、グリップがめり込んでいる為に開けたスロットルが戻ってこない。
しかしなんとか走れそうだ。
タンクに付いたガソリンをタオルで拭き、部屋に戻る。
走れるとは言え、借りたバイク。
「来た時よりも美しく」、「借りた時より美しく」が日本人の美徳。
已む無くGoogle先生にバイク屋の場所を教えて頂く。
世界各国どこにいてもGoogle先生は迷える子羊を導いて下さるのだ。
ブレーキレバーの在庫がある可能性が高いと、ハーレーのディーラーを探す。
できれば今日のルートの途中にあるところを。。。
こんな状況でも時間をロスしたくなかった。
するとMemphisから約160マイル先のConwayという街の高速沿いにディーラーを発見。
修理もやっている様子。
モーテルのおばちゃんに事情を話し、慰められながら出発。
内心、お前らが監視してたら良かったんちゃうんけ!!と思うが後の祭り。
悪いのは倒した奴で、おばちゃんではない。
ブレーキレバーが曲がったお陰で、手にフィットする様になった!
戻らないスロットルは自前のクルーズコントロールだ!
と、プラスに考えるも、本心では全くそう思わない。。。。
モーテルの隣のガソリンスタンドでこぼれたガソリンを給油。
テンション最悪の状態で三日目スタート。
今日の目標は約450マイル先のOklahoma City。
二日目② テネシーの手のひら @セーラム(テネシー州)~ナッシュビル~メンフィス(テネシー州)
走り出した二日目。
出発時の霧から打って変わって、晴天。
というか、暑すぎる。
昨日は気付かなかったけれど、かなり日焼けしていた。
この様子だと、今晩は酷い事になるな、とふと思う。
いずれにせよ、日焼け止めなど持っていないし、Memphisまで買える所も無いだろう。
カッパも持っていない奴が日焼け止めなどという気の利いたものを持っている訳が無い。
ジェットヘルメットの顔が出ている部分(除くサングラス部分)と腕の日焼けがすごい。
グローブをしているので、グローブを脱いでもグローブしているようだ。
Memphisに着いたら、日焼け止めを買おう。
手遅れかもしれないけど。
天気も良く、順調に走る。
水分補給を忘れずに、約70マイルに一回休憩を入れる。
ガソリンも130マイルくらいは持つけれど、念には念を入れて休憩の度に入れておく。
昼過ぎに昨日の目的地だったKnoxvilleを通り過ぎる。
あまりの遠さに、雨が降らなくても到着は難しかったんじゃないかと、計画のミスを嘆く。
まぁ過ぎたことは仕方ない。
ここから途中の街、Nashvilleまでも約200マイル、そこからMemphisまでも約200マイルだ。
昨日走った距離以上残っている。
アメリカのデカさをまたまた実感する。
今日は無心で走ることにした。
ロスへ帰る為には一日平均500マイルは走る必要があるのだ。
↑休憩中の風景
途中、パーキングエリア(Rest Areaと言います)でアメリカ人老夫婦に話しかけられる。
ロスまで行くことを言うと、冷やしてある水をくれた。
疲れた体に親切が染みる。
もうちょっと英語が話せたらなぁ。
夕方にようやくNashveilleに到着。
まだまだ先は遠い。
ただ、バイクと道に慣れてきたのか走行スピードが上がってきた。
昨日までは時速65マイルくらいだったのが、今日は70マイル以上で走れている。
しんどかったけれど、夜7時過ぎにMemphis到着。
モーテルは市内の端っこのMOTEL6。
モーテルに着いて気付いた。
今日はほぼ一日中、テネシー州を走っていた。
未だに脱出も出来ていない。
二日目① 昨夜の雨から一夜明けると @セーラム(テネシー州)
朝起きて、窓から天気を見る。
昨日、宿敵に叩きのめされた翌日だから当然である。
カーテンを開けると、そこには空一面に広がった。。。
霧
相変わらず天気は思わしく無さそうだ。
但し、雨は降っておらず、走り出す気合は十分。
何せまだ二日目なのだ。
しかも初日からビハインドしている。
下手するとこのままではロスまで帰れないかもしれないのだ。
焦る気持ちを抑え、モーテルをチェックアウト。
駐車場に出ると、幸いにもバイクは無事だった。
昨晩は雨にやられて気にならなかったが、モーテルの駐車場にバイクをむき出しで置くのは不安がある。
盗まれたらどうしようとか、壊されたらどうしようと考えてしまう。
レンタルバイクには各種ロックも付いておらず、ハンドルロックしか鍵を掛ける手段が無い。
当然アラーム付の防犯装置なんて無い。
こんなド田舎の高速沿いで運転不能になったら、猿岩石宜しくヒッチハイクで帰るしかないのだ。
そして運転不能になれば当然バイクのピックアップも頼まないといけない。
但しここはアメリカのド田舎のモーテル。
携帯の電波もままならず、Googleマップで位置を確認するなんてもっての他なのだ。
どうやって迎えに来てもらうかも分からない。
とにかくバイクのトラブルだけは避けたい、、、
明日以降はもう少し停め方を工夫しないといけない、なんて頭の片隅で考えた。
とにかく、気合を入れて、二日目出発。
今日は昨日の遅れもリカバリーしたいと思い、目的地をMemphisとした。
その距離、およそ500マイル。
昨日のように雨が降ったら、とてもじゃないが到達出来ないだろう。
とにかく雨だけは回避したいとどこかの誰かに祈りながら、モーテルを後にした。
一日目② 宿敵との初戦 @ワシントンD.C.~セーラム(テネシー州)
まずは予定通り、ワシントンDCのホワイトハウスへ直行。
正式なスタート地点はホワイトハウスと決めていましたので。
あいにく天気は曇りでしたが、近辺は観光客でいっぱい。
証拠写真を撮って、いよいよ出発。
ナビには本日の到着予定地であるNashvile(テネシー州)を入力。
走り出して都心部を抜け、両サイドに国立公園を見ながら高速道路I-40を走行。
森の中を走っているので少し肌寒いです。
片側2車線の道路で、中央には分離帯とまでは言えないですが芝生ゾーンがあります。
ちなみに周囲の車は70~80マイル(112~128km)で走行しています。
私は乗り始めで慣れておらず60マイル(96km)をキープ。
それでも結構速くて、風圧とバイクの振動、路面の衝撃に耐えるのに精一杯。
しばらく走ると、とうとうバイクの宿敵"雨"と対面。
ぽつぽつと降ってきていましたが。100km超えで走っていますから、当然痛い。
しかもついさっき、ジェットヘルメットを選んだので顔面直撃。
この時ほど「後悔」の二文字が頭に浮かんだことは無いかもしれません。
小雨は瞬く間に大雨と化す。
バイクを停めようにも、アメリカの高速の路肩は路面が悪く、すぐには停まれない。
比較的路面のよいところを見つけて停まらないといけません。
視界も悪いし、スピードを落そうにも周囲の車は相変わらず70~80マイルで走っているので、
なかなかスピードも落せません。
やっとのことでバイクを止めて、カッパを着ま・・・
せんでした!
というかカッパを持ってなかった(笑)
正確にはバイク屋で借りようと思っていたのですが、テンションが上がり忘れてしまっていました。
もはや笑うしかない!
持っていたウインドブレーカーを着ますが、防水性皆無。
5分後には私の第二の皮膚と化し、皮膚に密着しております。
寒いです。
初日から風邪ひきます。
30分ほどで雨が上がりました。
走っていると、風で服がみるみる乾きます。
乾燥しているアメリカならでは。
カッパ無しでも余裕だったなーと思っていると、
二度目の雨(お約束)
が、これも20分程度で切り抜け、また服が乾燥。
その後しばらく走り、バイクにも慣れて来た頃、メーターは350マイルを表示。
この時点で当初の目的地であるNashvileは無謀だということに気付く。
きっと到着する頃には日没を迎えている。
・・・というわけで目標変更。
今日は400マイル走ることにしよう!!
と新たな決意を胸に走っていると・・・
三度目の雨
もう心が折れました。
しかもこれまでの二回をしのぐ豪雨。
雨の中、誰かに向けて「ごめんなさい」と大声で謝罪するも、許してもらえず。
目に入ってきたモーテルに飛び込む。
目標を変更したのにもかかわらず、それすら達成できなかった。
このままでは会社の夏休み中にロスに着けないかもしれない。。。
でももう戻るわけにも行かない。
始まったばかりのアメリカ横断は、初日からまさに背水の陣と化したのである。
1日目
Washington D.C.~Salem(TN)
走行距離 380.1マイル(608.16km)